取締役会の決議の省略(書面決議)

取締役会設置会社では、取締役が決議の目的である事項について提案した場合に、取締役の全員(当該事項について議決に加わることができるものに限る)が書面又は電磁的記録により同意したときには、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなすことができます。この取締役会の決議の省略を行うためにはその旨の定款の定めが必要であり、監査役設置会社の場合は、監査役が当該提案について異議を述べていないことが必要となります。

株主総会の決議の省略(会社法319条)を行う場合には定款の定めは必要ありませんが、取締役会の決議の省略を行う場合には、その旨の定款の定めがなければなりません。(会社法370条)
取締役会における協議の省略を認めることは、定款の予定する取締役会制度の枠組みに重大な例外をもたらすものであることから、定款の定めを要することとされています。(論点解説 新・会社法P366 商事法務)

取締役の提案方法は法定されていないため、口頭でも書面でも電磁的方法でもよいとされています。特別の利害関係を有することにより議決に加わることができない取締役も提案を行うことができるとされています。提案内容については賛成しているものの、取締役会の会議を省略することに反対したい場合でも、同意をしないことができます。なお、取締役が同意しない場合であっても、その理由を述べる必要はありません。

取締役会の決議の省略を行うには、(監査役設置会社においては)監査役が異議を述べていないことが必要になります。
ただし、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する定款の定めがある場合には、監査役は異議を述べることができません。

取締役、会計参与、監査役、又は会計監査人が取締役(監査役設置会社の場合は、取締役及び監査役)の全員に対して取締役会に報告すべき事項を通知したときは、当該事項を取締役会に報告する必要はありません。(会社法372条1項)
ただし、代表取締役及び業務執行取締役の3ヶ月に1回以上の定例報告を省略することはできません。(会社法372条2項)

取締役会の決議を省略した場合だけでなく、取締役会への報告を省略した場合も、取締役会議事録は作成しなければなりません。
取締役会の決議の省略を行った場合に取締役会議事録に記載すべき事項は、以下のとおりです。(会社法施行規則101条4項1号)

1.取締役会の決議があったものとみなされた事項の内容
2.1の事項の提案をした取締役の氏名
3.取締役会の決議があったものとみなされた日
4.議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

また、取締役会への報告の省略を行った場合に取締役会議事録に記載すべき事項は、以下のとおりです。(会社法施行規則101条4項2号)

(1)取締役会への報告を要しないものとされた事項の内容
(2)取締役会への報告を要しないものとされた日
(3)議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

取締役会の決議の省略を行った場合の取締役会議事録には、会議に出席した取締役等が存在しないため、会社法上は出席取締役等による署名または記名押印の義務はなく、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名のみ記載すれば足りると解されています。

ただし、決議内容が代表取締役を選定している場合、変更前の代表取締役が会社届出印を押印していなければ、以下のどちらかの対応が必要になります。

①同意の意思表示をした取締役全員が議事録に記名押印する(個人実印での押印が必要)
②議事録作成者の記名押印がある議事録に加えて、同意書を作成する。(同意の意思表示をした取締役全員の記名押印(個人実印での押印)が必要)

「論点解説 新・会社法」 相澤哲ほか編著 株式会社商事法務
「論点体系 会社法3」編著 江頭憲治郎 中村直人 第一法規株式会社
「取締役・取締役会の法律実務Q&A」編著 島田邦雄 株式会社商事法務
「Q&A商業登記と会社-司法書士が押さえておきたいポイント-」 編集 加藤政也 新日本法規出版株式会社
「商業登記ハンドブック」 (著)松井信憲 株式会社商事法務
「議事録作成の実務と実践」編著 鈴木龍介 第一法規株式会社 

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