代表取締役の選定方法
代表取締役は、株式会社を代表し、業務に関する一切の裁判上、裁判外の行為をすることができます。(会社法349条1項、4項)
取締役会を設置している会社と取締役会非設置の会社では、代表取締役の選定方法は異なります。
また、取締役会非設置会社では3種類の方法から代表取締役の選定方法を選ぶことができます。
取締役会非設置会社で代表取締役の選定方法を選択する際に注意すべき点についてまとめてみました。
取締役会設置会社の場合
取締役会設置会社の代表取締役の選定方法は、取締役会の決議によります。(会社法362条3項)
ただし、定款に定めることにより株主総会の決議で代表取締役を選定することができます。(会社法295条2項)
取締役会非設置会社の場合
取締役会非設置会社の取締役は、会社を代表し、業務に関する一切の裁判上、裁判外の行為をする権限を有するのが原則です。(会社法349条1項、4項)
また、以下のいずれかの方法により、取締役の中から代表取締役を選定することができます。(会社法349条3項)
①定款
②定款の定めに基づく取締役の互選
③株主総会の決議
代表取締役を選定した場合、その者のみが会社の業務に関する一切の裁判上、裁判外の行為をする権限を有し、他の取締役は会社を代表する権限を有しません。
以下、3つの選定方法について解説します。
①定款(定款に代表取締役を記載する方法)
株主総会の特別決議により定款を変更し、代表取締役を選定する方法です。
株主総会の決議により代表取締役を選定する場合(この決議は普通決議になります)に比べ決議要件が重く、代表取締役を選定するたびに定款を変更しなければなりません。
②定款の定めに基づく取締役の互選
1.取締役の互選により代表取締役を選定する旨を定款に定める
2.実際に取締役の互選により代表取締役を選定する
定款に互選規定を定めておけば、代表取締役を選定する場合に株主総会を開催する必要はないため、他の方法よりも機動的に選定手続きを行うことができます。
ただし、持株比率(議決権数)に関係なく取締役の互選で代表取締役を選定できてしまうため、代表取締役が株式のほとんどを所有している会社の場合、この選定方法を選択してよいのか慎重に検討する必要があります。
③株主総会の決議
株主総会の普通決議により、代表取締役を選定します。
この場合、定款に定めがなくても株主総会の決議により代表取締役を選定することができます。
株主総会を開催するコストが掛かりますが、株主に代表取締役を選定する権限があるため、経営者が大部分の株式を所有している会社ではこの選定方法を採用している事例が多く見られます。
参考書籍
(著)江頭憲治郎 「株式会社法」 株式会社有斐閣
(著)相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔 「論点解説 新・会社法」 株式会社商事法務
(著)田村洋三 /監修 土井万二・内藤卓・尾方宏行/編集代表
「第4版 会社法定款事例集 定款の作成及び認証、定款変更の実務詳解」 日本加除出版