株券発行会社における譲渡制限規定の変更
株式の譲渡制限に関する規定の変更は、株主総会の特別決議により定款を変更することによって行います。
また、変更日から2週間以内に会社の本店所在地を管轄する法務局へ変更の登記申請をしなければなりません。
株主総会決議について
株式の譲渡制限に関する規定を変更するには、株主総会の特別決議が必要です。(会社法309条第2項)旧商法時代は、株式の譲渡制限の規制が強化される場合は、特殊決議が必要であるとされていましたが、会社法施行後は内容の変更の場合には特別決議で足りるとされました。(譲渡制限規定を新たに設定する場合のみ特殊決議(会社法309条3項)が必要)
株券提出公告は必要か
株券発行会社において株式の譲渡制限に関する規定を変更する場合、株券提出公告は不要です。
株券提出公告に関する会社法219条1項1号は、「定款の定めを設ける定款の変更」となっており、規制を新設する場合を対象にしています。
そのため、株式の譲渡制限に関する規定を変更する場合には、この手続きを行う必要はありません。
譲渡制限規定を新設する場合に株券提出公告が必要な理由は、譲渡制限規定が株券の必要的記載事項となっているためです。(会社法216条3号)
株券には「譲渡による当該株券に係る株式の取得について株式会社の承認を要することを定めた」旨を記載する必要があります。(会社法216条3号)そのため、譲渡制限規定を新設する場合には株券提出公告を行い、旧株券を回収して無効にし、譲渡制限規定を記載した株券を新たに発行します。
株券に譲渡制限の旨を記載するのは、株券を見た時に譲渡制限株式なのかどうかがすぐに判断できるようにするために記載されています。そのため、譲渡制限規定があるかないかの判断ができればよいので、承認機関や譲渡承認擬制の内容について株券に記載する必要はありません。譲渡制限規定を変更する場合には、変更内容を株券に記載する必要がないため株券提出公告を行う必要はありません。
登記手続
株式の譲渡制限に関する規定を変更した場合、変更日から2週間以内に会社の本店所在地を管轄する法務局へ変更の登記申請をしなければなりません。
登記申請の内容は以下のとおりです。
「登記の事由」 株式の譲渡制限に関する規定の変更
「登記すべき事項」 変更後の譲渡制限の定め及び変更年月日を記載
「添付書類」 株主総会議事録、株主リスト
「登録免許税」 3万円(登録免許税法別表第一第24号(一)ツ)
※なお、譲渡承認機関を明示せず「当会社の承認を要する」と登記している会社は、譲渡承認機関を変更したり、解散した場合でも変更登記をする必要はありません。
参考書籍
「論点解説 新・会社法」 相澤哲ほか編著 株式会社商事法務
「論点体系会社法2」 (編著)江頭憲治郎 中村直人 第一法規株式会社
「商業・法人登記500問」 (編著)神﨑満治郎 金子登志雄 鈴木龍介 株式会社テイハン
「商業登記ハンドブック」 (著)松井信憲 株式会社商事法務
「論点解説 商業登記法コンメンタール」(編著)神﨑満治郎 金子登志雄 鈴木龍介 一般社団法人金融財政事情研究会