株式の分割

株式会社は発行済株式を細分化するために株式の分割をすることができます。(会社法183条)
株式の分割をするときは、株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)の決議によって以下の内容を定めなければなりません。
①分割比率 ②基準日 ③効力発生日 ④種類株式発行会社の場合は分割する株式の種類

取締役会設置会社である株式会社が株式の分割を行う場合は、定款に別段の定めがある場合を除き、以下の手続きを行う必要があります。

「取締役会設置会社の場合」※未上場の株式会社のスケジュールになります。

・取締役会招集決定
     ↓
・取締役会招集通知発送
     ↓
・取締役会開催(①分割比率 ②基準日 ③効力発生日 ④種類株式発行会社の場合は分割する株式の種類について決議)
     ↓
・(種類株主総会決議)  ※種類株式発行会社で種類株主に損害を及ぼす恐れがある場合
 ただし、定款で決議不要にできる。(会社法322条2項)その場合は種類株主への通知または公告(会社法116条1項3号イ、3項、4項)
     ↓
  ・基準日公告  ※基準日の2週間前までに
     ↓
   ・基準日
     ↓
  ・効力発生日  ※基準日と効力発生日を同日とすることが可能
     ↓
  ・登記申請   ※効力発生日から2週間以内

株式の分割については必ず基準日の設定が必要となっています。
そのため、定款に当該基準日及び当該事項についての定めがあるときを除いて、基準日の2週間前までに基準日及び基準日時点の株主を対象に株式の分割を行うことを公告をしなければなりません。(会社法124条3項)

株主の協力が得られるのであれば、株主総会を開催し、基準日を定款に定めることで基準日の公告を省略することができると考えられています。(会社法124条3項ただし書き)
また、株主総会決議の省略(会社法319条)により定款変更をして株式分割の基準日をその株主総会の日に設定し、取締役会でその日を効力発生日とする株式の分割の決議を行えば、1日で株式の分割を行うことも可能であるとされています。※参考 「論点解説 新会社法 P187」

一方で、基準日に関する定款の定めは、効力発生日の2週間前までに存在している必要があるとした下級審の裁判例があるため注意が必要です。(東京高裁平成27年3月12日)
この裁判例は上場会社に関するものであり、すべての会社について同様の取扱いをすべきかは不明確ですが、慎重に対応すべきであると考えています。

この点について、弁護士邉英基先生が書かれた「旬刊 商事法務No2368 P69 実務問答会社法第88回『株式の分割と基準日』」が参考になるため、詳しくはそちらをご確認されることをお勧めします。

株式の分割を最短の日数で行うために基準日公告を省略したいが、株主の協力が得られない場合や株主数が多数である場合は、定款を変更して基準日公告を省略することは難しくなります。
その場合は、株式無償割当てを行うことで株式の分割と同様の効果をもたらすことができます。(株式無償割当ての基準日設定は任意のため、基準日公告にかかる日数を短縮できます。)

ただし、株式無償割当ての場合、自己株式に株式を割当てることはできないため、自己株式を保有している場合には株式の分割と完全に同一の結果にはならないことに注意が必要です。

効力発生日から2週間以内に会社の本店所在地を管轄する法務局へ登記申請をしなければなりません。
添付書類は、株主総会議事録及び株主リスト(取締役会設置会社の場合は取締役会議事録)、種類株主総会の決議が必要な場合は、種類株主総会議事録及び株主リストも必要になります。
登録免許税は申請1件につき3万円です。(登録免許税法別表第一第24号(一)ツ)

参考書籍

「論点解説 新・会社法」 相澤哲ほか編著 株式会社商事法務
「論点体系会社法2」 (編著)江頭憲治郎 中村直人 第一法規株式会社
「事例で学ぶ会社法実務 全訂第2版」 (著)金子登志雄・立花宏・幸先裕明 中央経済社
「商業・法人登記500問」 (編著)神﨑満治郎 金子登志雄 鈴木龍介 株式会社テイハン
「商業登記ハンドブック」 (著)松井信憲 株式会社商事法務


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