普通株式の一部を種類株式に変更する方法
種類株式を新規に発行するのではなく、発行済株式の一部の内容を変更したい場合に必要な手続きについてまとめています。
発行済株式の一部の内容を変更する方法について、会社法には明文の規定がありません。
ただし、登記実務において①変更対象株式を保有する株主と株式会社の合意②その他の既存株主全員の同意があれば有効に行うことができます。(昭和50年4月30日民四2249号回答)
事業承継の場面での活用
経営者の親族が後継者として事業を承継した場合、その後の会社経営を円滑に行うためには、他の相続人の議決権を排除し、後継者に議決権を集中させることが望ましいとされています。
そこで、普通株式の一部を無議決権株式に変更し、議決権のある普通株式を後継者となる親族に相続させ、議決権のない種類株式をその他の相続人に相続させることで事業承継後の経営を円滑に行うことができるようにすることができます。
登記手続
①株主総会で種類株式の内容を定めた定款変更決議を行う
②種類株式へ変更する株主と株式会社で合意をする
③当該株主以外の株主全員から同意を得る
登記申請時には、上記①、②、③が行われたことを証する(1)株主総会議事録(2)株主との合意書(3)当該株主以外の株主全員の同意書を添付します。
また、商業登記規則第61条第2項の株主リスト及び同第3項の株主リストも添付する必要があります。
ただし、当該株主以外の株主が一切の不利益を被らない場合は、「同意書」に代えて、「その旨を証明する上申書」を添付しても差し支えないとされています。
参考書籍
「商業・法人登記500問」 (編著)神﨑満治郎 金子登志雄 鈴木龍介 株式会社テイハン
「商業登記全書第3巻 株式・種類株式」(編者)内藤卓 中央経済社
「商業登記ハンドブック」 (著)松井信憲 商事法務