合同会社から株式会社への組織変更
合同会社は株式会社に比べ設立時に掛かる費用が安く済むため、会社設立時に合同会社を選択するケースが増えています。
合同会社を設立した後、株式会社へ組織変更する手続きについてまとめました。
手続きの概要
1 組織変更計画の作成(会社法第746条)
2 効力発生日の前日までに総社員の同意を得る(会社法第781条第1項)
3 債権者に対する異議申述公告及び個別催告(会社法第781条第2項)
4 効力発生日の到来(会社法第747条)
5 株式会社の設立登記申請、合同会社の解散登記申請(会社法第920条)
1. 組織変更計画の作成
合同会社が組織変更する場合には、組織変更計画において、以下の内容を定める必要があります。(会社法第746条)
1.組織変更後の株式会社の目的、商号、本店所在地及び発行可能株式総数
2.前号に掲げるもののほか、組織変更後株式会社の定款で定める事項
3.組織変更後株式会社の取締役の氏名
4.イ 組織変更後株式会社が会計参与設置会社の場合
会計参与の氏名または名称
ロ 組織変更後株式会社が監査役設置会社の場合
監査役の氏名
ハ 組織変更後株式会社が会計監査人設置会社の場合
会計監査人の氏名または名称
5. 組織変更をする持分会社の社員が組織変更に際して取得する組織変更後株式会社の株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
6. 組織変更をする持分会社の社員に対する前号の株式の割当に関する事項
7. 組織変更後株式会社が組織変更に際して組織変更をする持分会社の社員に対してその持分に代わる金銭等を交付するときは、会社法第746条1項7号イ、ロ、ハ、ニ 会社法第746条1項8号に掲げる事項
8. 効力発生日
2.総社員の同意
組織変更の効力発生日の前日までに、組織変更計画について総社員の同意を得なければなりません。(ただし、定款に別段の定めがある場合を除く)(会社法第781条第1項)
合同会社の場合、社員が複数人いても会議体を開く必要はありません。
3.債権者保護手続
組織変更をする合同会社の債権者は、当該合同会社に対し、組織変更について異議を述べることができます。(会社法第781条第2項、会社法第779条)そのため、合同会社は官報での公告及び知れたる債権者への個別の催告をする必要があります。ただし、官報公告に加えて、定款に定める日刊新聞紙での公告または電子公告を行う場合には、知れたる債権者への個別催告を省略することができます。
官報公告には、1.組織変更をする旨 2.債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨を記載します。この一定の期間は1ヶ月を下ることはできません。
官報公告をするには3万円~5万円の掲載費用が掛かります。
4.効力発生日の到来
組織変更計画に定めた効力発生日の到来により、組織変更の効力が発生します。
この効力発生日は変更することが可能です。ただし、効力発生日の前日までに新しい効力発生日を公告しなければなりません。
5.登記申請
効力発生日から2週間以内に株式会社の設立登記と合同会社の解散登記を申請しなければなりません。(会社法920条)
株式会社の設立登記に必要な登録免許税は、設立会社の資本金の額の1000分の1.5(消滅会社の組織変更直前における資本金の額として財務省令で定めるものを超える資本金の額に対応する部分については,1000分の7。これによって計算した税額が3万円に満たないときは,3万円)です(税法別表第一第24号(一)ホ)。
合同会社の解散登記の登録免許税は3万円です。(税法別表第一第24号(一)レ)。
まとめ
合同会社から株式会社へ組織変更する場合、最低でも約10万円程度の実費が掛かります。
設立時の費用が安く済むことから、一旦合同会社を設立し、その後株式会社へ組織変更すればよいと考えることもできますが、司法書士報酬もあわせると最初から株式会社を設立したほうが費用は安く済むことが多くなっています。
会社を設立する場合は、設立にかかる費用だけで会社形態を選択するのではなく、行うビジネス内容や資金調達の方法なども考慮し、今後の事業計画にもっとも適した会社形態を選択することをお勧めします。
参考書籍
詳解合同会社の法務と税務 安部慶彦著 中央経済社
会社法務書式集〈第3版〉神﨑満治郎 著 金子登志雄 著 鈴木龍介 著 株式会社リーガル 著 中央経済社
第2版 不動産・商業等の登記に関する Q&A 登録免許税の実務 清水湛/監修 藤谷定勝/編著 日本加除出版