利益相反取引を承認した議事録等(不動産登記申請時に提供する第三者の承諾を証する情報)

取締役が以下の内容を行うには、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならないとされています。(会社法356条1項)
また、取締役会設置会社の場合は取締役会の承認を受けなければなりません。(会社法365条1項)

①取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき(競業取引)
②取締役が自己または第三者のために株式会社と取引をしようとするとき(直接取引)
③株式会社が取締役の債務を保証すること、その他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。(間接取引)

上記の利益相反行為に関連する不動産登記申請を行う場合は、第三者の承諾を証する情報として、株主総会議事録や取締役会議事録等を提供しなければなりません。(不動産登記令7条1項5号ハ)

不動産登記申請時には利益相反行為を承認した以下のいずれかの情報を提供しなければなりません。

①株主総会議事録
②書面決議による場合の株主総会議事録(会社法319条1項)
③株主全員の同意書


①及び②の株主総会議事録について
会社法上、株主総会議事録に記名押印をする必要はありません。
しかし、不動産登記令19条1項は、第三者の承諾を証する情報を記載した書面には、公証人等が認証した場合を除き記名押印を求めています。
また、この書面には記名押印した者の印鑑証明書及び資格証明情報を添付しなければなりません。(不動産登記令19条2項)

株主総会議事録には、作成に係る職務を行った取締役の氏名を記載することになっているため、その取締役が記名押印し、その者の印鑑証明書を添付することになります。(会社法施行規則72条3項6号)(会社法施行規則72条4項1号ニ)
ただし、代表取締役が議事録作成に係る職務を行った取締役として株主総会議事録に記名押印した場合、会社法人等番号を申請情報の内容としたときは、印鑑証明書及び資格証明情報の添付を省略することができます。

③株主全員の同意書について
株主全員が記名押印し、市区町村長が発行した印鑑証明書を添付する必要があります。(平成18年3月29日民二第755号)

不動産登記申請時には利益相反行為を承認した以下のいずれかの情報を提供しなければなりません。

①取締役会議事録
②書面決議による場合の取締役会議事録(会社法370条)
③取締役全員の同意書
 

①取締役会議事録について
取締役会議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役が記名押印をしなければなりません。(会社法369条3項)(不動産登記令19条1項)
また、この書面には記名押印した者の印鑑証明書及び資格証明情報を添付する必要があります。(不動産登記令19条2項)

②書面決議による場合の取締役会議事録
取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合に、取締役の全員(特別の利害関係を有する取締役を除く)が同意したときは、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができます。(会社法370条)
この場合に作成する議事録には、作成に係る職務を行った取締役の氏名を記載することになっているため、その取締役が記名押印し、その者の印鑑証明書及び資格証明情報を添付することになります。(会社法施行規則101条4項1号ニ)
なお、監査役設置会社の場合、監査役の異議がないことが条件となっているため(会社法370条かっこ書)監査役が異議を述べなかった旨を記載する必要があります。

③取締役全員の同意書
特別の利害関係を有する取締役を除く取締役全員の同意書を第三者の承諾を証する情報とすることができます。(平成18年3月29日民二第755号)この場合は、取締役全員(特別の利害関係を有する取締役を除く)が記名押印し、市区町村長が作成した印鑑証明書を添付する必要があります。

参考書籍

〔8訂版〕事項別/不動産登記のQ&A210選 著/日本法令不動産登記研究会編 日本法令

〔補訂版〕利益相反行為の登記実務 著/青山修(司法書士) 新日本法規出版

不動産登記の実務と書式 著/司法書士登記実務研究会編 民事法研究会

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