株式交換・株式移転において債権者保護手続が必要になる場合

株式交換や株式移転の場合、合併等と異なり、債権者を害するおそれがないため、原則として債権者保護手続は不要です。ただし、例外的に債権者保護手続が必要となる場合があります。
どのような場合に債権者保護手続が必要になるのかまとめてみました。

株式交換契約または株式移転計画の中で、完全子会社の新株予約権付社債権者に完全親会社の新株予約権を交付し、完全親会社が社債に係る債務を承継する旨を定めた場合、例外的に債権者保護手続が必要になります。

完全子会社の新株予約権付社債権者にとっては債務者が変わることになり、完全親会社の債権者にとっては債務が増加するため、完全子会社及び完全親会社の両会社で債権者保護手続を行う必要があります。(会社法789条1項3号、810条1項3号)
ただし、完全子会社においてはすべての債権者が対象ではなく、新株予約権付社債権者のみが対象になります。

完全親会社が支払う対価が株式以外(現金など)の場合、完全子会社の株式が過大に評価されると、財産が流失し債権者を害する恐れがあります。
そのため、この場合には完全親会社において債権者保護手続が必要になります。ただし、株式以外の対価が対価総額の5%未満の場合には、債権者を害する可能性は少ないため、債権者保護手続をする必要はありません。(会社法799条1項3号、会社法施行規則198条)

株式交換完全親会社が株主資本等変動額の一部または全部をその他資本剰余金に計上する場合、債権者保護手続きを行なっている必要があります。
一方、株式移転の場合は債権者保護手続きなしで、株主資本等変動額の一部または全部をその他資本剰余金への計上が可能です。(会社計算規則52条)

参考書籍

「株式会社法」(著)江頭憲治郎 株式会社有斐閣

「事例で学ぶ会社の計算実務」 (著)金子登志雄 有田賢臣 中央経済社

「商業登記全書第7巻 組織再編の手続」 (著)金子登志雄 中央経済社

「事例で学ぶ会社法実務 全訂第2版」 (著)金子登志雄 立花宏 幸先裕明 中央経済社

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